57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

テレビは顔である

記者会見、テレビの連中のなかにハンサムだけど何も知らないやつがいて、ぼくのことを嫌いだという態度が丸見えだったから、こっちもひどく無礼にしてやった。

(『ウォーホル日記』P・ハケット編 中原佑介野中邦子訳)

 

顔はテレビだ。言いかえれば、テレビは顔だ。画面にはたいていの場合人の顔が映っているのもそのせいだ。それはほとんど母の顔のことを意味している。四六時中母親の顔を見ていたい、という欲求にこたえるために各家庭に置かれていたのがテレビだから当然だけど、顔が映っていないときでも、テレビはやはり顔なのだ。顔はつねに顔らしく見えているわけではない。時には目や鼻や口がほどけて、ただ輪郭を埋める色や模様だけがめまぐるしく変化していることもあるだろう。そんな時間もまた(母親の)顔におとずれる様相のうちにある。そして電源を落とされたあとの暗い画面。それは母親の死顔=寝顔というよりも、わたし自身が眠りにおち、わたしを見張る顔が視界から消えうせるあの甘やかで物寂しい時間を再現しているはずだ。