57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

工業製品

孤獨にて初夏の遊園地の 類人猿 チンパンジー の最敬禮をうけゐる/塚本邦雄

『日本人靈歌』

 

遊園地は工場に似ている。もちろん遊園地では「人間の目的に機械を奉仕させる」という関係は維持されているのだが、その「目的」が「機械の駆動そのものを体験する」ことに置かれるために半透明化して、まるで主従の逆転が起きているようにみえるのだと思う。
じっさいのところ、機械と人間の関係が逆転した世界を体験したいという欲望が、遊園地の成立と無関係だとは思えない。巨大な機械に支配され、こちらからは目的の窺い知れないその駆動ぶりに翻弄され、自らの無力さを味わいたい。いっときのディストピアのフィクションに溺れたのちに安全に離脱することで、じつは自分たちは言語というシステムに生産された工業製品にすぎないのでは? といううっすらと兆した疑念を遠回しに否認しようとしている。このときわれわれは、いちばん不安でたまらないことをあえて冗談にして自他に笑いを求めるときの、あの気遣わしげな目つきをしているだろう。