57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

どきどきさせる

君のかばんはいつでも無意味にちいさすぎ たまにでかすぎ どきどきさせる/宇都宮敦

『ピクニック』

 

 「ちいさすぎ」ることと「でかすぎ」ることのあいだで「君のかばん」が拍動している。四句までかけて示されたその拍動が、結句で話者に「どきどきさせる」といわせているのだが、この歌の心臓である「君のかばん」の拍動つまり収縮と弛緩のうち収縮、すなわち心臓が「ちいさ」くなることで血液を送り出すうごきにここでは「無意味に」と添えられ、この拍動によって歌が生かされるリズムが話者によって自らの感情のうごきのよろこばしさとして引き取られるとき、歌はこの「無意味」さを一首をかけて全身でよろこぶために生まれた生き物のようだ。
人間と歌はどちらも言葉でできている。歌に誰かがいるようにみえ、その誰かに命があるようにみえるなら、理由はただそのことに尽きているのだと思う。