57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

答えはない漂うだけでいいのだと五月の紙がペラペラ喋る/盛田志保子

「旅」

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紙がペラペラで薄いことも、その紙がペラペラとめくれることも、誰が知っているのかというと、紙が知っているのだ。だからペラペラというオノマトペは、あっさりと紙が喋る音へと裏がえる。歌ではいつも誰かがうたっているか、かたっているが、そこで声が「私」の話など始めたとすれば、それはそういう「お話」として聞いておけばいいけれど、真面目な話、そこでうたっているのもかたっているのも、じっさいのところはいつも「紙」なのだ。そんな身も蓋もない話は冗談めかして口にするしかない。オノマトペが裏がえる勢いにまかせ、風と紙がこすれる音がそう聞こえているふりをして。