57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

出口と入口

ぼくたちは婚約を解消した。「じゃぼくたちはこれで」 男はカラになったグラスを置いて、ぼくの婚約者だった女と店を出た。(「時間をかけた料理」津山紘一) たいていの出口はたんに入口を裏返しただけのものだ。だから入口さえしっかり握りしめ手放さなけ…

絞られたチューブ

「猫投げるくらいがなによ本気だして怒りゃハミガキしぼりきるわよ」/穂村弘 『シンジケート』 短歌は一般に、定型という容器に言葉を詰め込んだものだと思われがちだが、短歌はほんとうは、中身を絞って使いきられた歯みがき粉のチューブに近いものだ。 一…

名前を呼ぶ

「離歌と書いてリジンと読むんだ。おわかれの意味だよ」 (『夢日記』山中千瀬) わたしに思い出してほしいなら、あなたはわたしの名前を呼ぶべきだ。人は自分の名を呼んでくれた人のことはけっして忘れない。わたしの名前を呼ぶことで、あなたは最初にわた…

歌には裏があるよ

でも確かに、まみにはどこか時間感覚を狂わせるところがある。一緒にいると、目の前の出来事が想い出か未来の予兆のように距離感がブレて感じられるのだ。 (「手紙魔への手紙」穂村弘) みんなが少しずつ短歌のまねをして、クリームソーダやウスターソース…

アイスココア

きいてみてわかったことは、その話を知っているものが、意外に多いということだった。――とすると、かなり有名な話にちがいない。趣味で怪談を集めたこともある私が、どうして今まで知らなかったのだろう? (「牛の首」小松左京) 他人の名前で町を歩いてた…