57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

表紙しかない

あなたのおばあさんはいつかあなたを思い浮かべ、続いていくはずだった営みを想像しました。さあ、墓をいっぱい立てよう!

(「うつし絵」大江麻衣)

 

毎日いろんな表紙のことを想像してたら、いつのまにか中身はどこかへ消えてしまった。今では本は表紙だけが売り買いされてる。すべてが書かれてる表紙と、何も書かれてない表紙。暗示する表紙。切り売りする表紙。点滅する表紙や虚偽の表紙、扇情的な表紙。鸚鵡返しの表紙。どの表紙もタイトルと著者名が、これ以上ないほど大きく印刷されてた。大きすぎてそれは誰の目にも留まらなかった。宇宙のことをそのサイズどおりに想像しながら生きてる人間は誰もいない。わたしたちはみんな晴天や曇天どまり。墓石の表面にだって、くっきり映り込むのは雲までなんだ。知らなかったとは云わせないよ?