57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

バナナ

終了後、舞台の電気を消しにマネージャーが出て来たので、三人で舞台の端に坐りバナナを食べた。彼女は「王と長嶋はどうだったの」と野球の結果を気にしていた。

(「蒸発旅日記」つげ義春

 

包帯とセロテープで自分が作れる、という話を友達にした。友達は笑って信じてくれなかったが、実際に作ってみせると納得してくれた。それどころか感心を通り越して興奮気味に「もう一回やって見せて」「もう一回」とせがむので、そのたび応えていると包帯もセロテープも足りなくなり、やがて実に中途半端な風船のような自分以前のものが、セロテープの端で電柱に貼りつき、ふわふわ揺れる。友達は露骨に失笑をうかべながら「こういうのもきみらしくて悪くないと思う」と云った、その心のない口調。期待させたおまえが悪いといわんばかりの態度に、かちんときたけど何故だろう、何も反論できず、自分の顔が真っ赤になるのがわかったし、信号のむこうでふりかえる友達から見れば、血に染まった包帯みたいだ。