57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

鑑賞することは制作と同じように興奮して疲れる。他人の作品を観ながら、自分の頭の中では対象をなぞりながら描いているからだ。

(『人工庭園』横尾忠則

 

短歌を読むことは、暗闇で建物の中を歩くことのようだ。文字は頭の中に響く声である。ドアを開けて、真っすぐ歩け。左へ折れて襖を開けろ。少し進むと階段がある。五段のぼったら踵をかえし、引き返して来い。右手に窓があるから半分開けて、風を入れろ。……そのような声が暗闇に響いているが、手さぐりしてもドアや襖に触れないし、つま先が階段をさぐりあてることもない。だが暗闇で「ここには何もない」とつぶやくことは禁じられている。声に耳をすませるしかないのだ。