57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

反映の景色

マドンナのわきの下のメロディーが大根切るとうっすらながれる/杉山モナミ

『かばん』2019年12月号

 

人体は、人体に似ている。手の指は足の指に似ているし、膝は肘に、唇は肛門に、歯は爪に、尻は胸に。似ていることが絶えず折りたたみ、重ね合わせ、わたしをひとつのものに留めている。
このちからと同じものが短歌にはあるだろう。初句と三句は似ている。二句と四句と結句は似ている。上句と下句もどこか似ている。短歌は絶えず折りたたまれ、重ね合わされることでひとつのものに留まる。そのことが、短歌を人体の比喩として読ませることの正しさを証すのではない。人は、つまり人体にいるわたしは、世界を人体の比喩として見る習慣にとらわれている。そのあまりに自然な反映の景色から、逃れようとあがくつもりがあるかどうかが歌には問われているのである。