57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

わたしの刺青

シャボン玉口にふくんだような声ですが決して名前は呼ばないのです/飯田有子

『林檎貫通式』

 

自分ではみることのできない位置に刺青された名前を、みんながさまざまな読み方で呼んでくるので、あなたはいつまでたってもその刺青を自分でもみたことがあると信じ込むことができない。
鏡にうつせば鏡なりの読み方で、写真にうつせば写真なりの読み方でその都度あなたが呼ばれる。誰もそこで自信なさげにくちごもったりなどしない。他人の刺青を読むことは目と声にとって晴れ舞台といっていいから、あなたはふえつづける名前に気を取られながら自分が朗読される物語になった気分を味わうのだ。