57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

ラブ&ピース

原価1円のコーラと、ミンチにされた牛肉が生み出す愛に全てが駆逐され、1990年代を生き延びることができなかった、資本主義的なLOVEは、ラブホテルのLOVEとして今も生き続けている。

(「『足の踏み場、象の墓場』全首評①」N/W)
https://tomtanka.tumblr.com/post/184129596981/

 

ラブホテルはどれも内臓をさらけ出したような外観をしている。ホテルの前に立った者に、もう自分はホテルに飲み込まれたんだと思わせることに半ば成功し、半ば失敗したような外観だけど、ホテル街にいるあいだきみはその半分の世界をぐるぐるさまようことに夢中で、やがてラブ酔いして目が回って道端にしゃがみこむ。この街に住むにはどうしたらいいんだろう。相談する相手の顔が浮かばないまま握りしめたスマホで時々入口を撮っていても、愛のホテルからはいつも「ここがそうなんだよ」という肯定のテレパシーしか感じない。だからホテルを出てきた人を撮ろうとしたらいきなり殴られて、地面に叩きつけられ踏まれてみしっと音までしたはずのスマホがなぜか傷ひとつなく、手の上でその人の笑顔のピースサインを輝かせていてもきみは驚かなかった。
連れの男の子も肩ごしに小さくピースをしてくれている。それは大きくて汗っかきな激情家のひらがなにそえられた、真顔の濁点のようだ。