57577 Bad Request

故障中のエレベーターで旅をする

小さな箱

建物があれば野原とは呼べなくなってしまうので野原管理者という仕事は消えてしまうのだ。だからぼくたちは地面に直接腰かけたり寝そべったりする生活に耐えなければならなかった。

「野原ひろがりセンター」我妻俊樹

 

これからは野原とそこに落ちる影のことだけを、言葉にして、その言葉を踏んで暮らしていきたい。言葉はそれ以上下に落ちないために、橋のように、空間に架けられているのかもしれない。どこにも野原など見当たらなかった。それは言葉の上にだけに見晴らせる風景だった。やめよう、足を止めるのは。歩き続けていると、鳥や魚がわたしの影をよこぎるのがわかる。石ころや枯れ草が影にこすれて音をたてた。風は吹いていないのに、旗があんなにひろがっているのは、なんだか苦しいね。空に貼りつけられてしまった旗の話。あそこまで行けばきみは引き返すことになる、この世界は、思いのほか小さな箱に収められている。